伝統知を守り、生物多様性を保全する
環境が気になる
先生、『伝統知』という言葉について、もう一度教えていただけますか?
地球環境の専門家
生徒さん、伝統知とは、それぞれの地域の人々が、自然とのかかわりの中で培ってきた伝統的な知識や知恵のことです。生物多様性の保全や持続可能な利用に役立つのですが、残念ながら失われつつあります。
環境が気になる
生物多様性の保全や持続可能な利用に役立つのは、なぜですか?
地球環境の専門家
伝統知には、生物多様性を保全するためのさまざまな工夫や慣行が含まれています。例えば、先住民社会の中には、特定の動植物を保護するための聖域を設けたり、持続可能な狩猟や漁業の方法を持っていたりします。こうした伝統知は、生物多様性の保全に役立つだけでなく、持続可能な開発にも貢献します。
伝統知とは。
「伝統知」は、それぞれの地域において、人と自然の関わりの中で、世代を超えて受け継がれてきた伝統的な知識や知恵のことです。生物多様性の保全や持続可能な利用に貢献しますが、近年では失われつつあります。
生物多様性条約や名古屋議定書は、地域社会や生物資源との密接な結びつきを認識し、伝統知の利用から生じる利益の公平な配分を定めています。
愛知目標18では、「2020年までに、生物多様性の保全と持続可能な利用に関する先住民社会や地域社会の伝統知、工夫、慣行およびこれらの社会の生物資源の利用慣行が、国内法制度と関連する国際的義務に従って尊重され、これらの社会の完全かつ効果的な参加のもと、あらゆる関連するレベルにおいて、条約の実施に完全に組み入れられ、反映される。」と記されています。(2021年7月作成)
伝統知とは何か
伝統知とは何か
伝統知とは、先住民族や地域社会が世代を超えて受け継いできた知識、信念、慣習のことです。生態系や自然資源の持続可能な管理、医療、農業、建築、芸術など、さまざまな分野にわたります。伝統知は、先住民族や地域社会のアイデンティティや文化に深く根ざしており、彼らの生活や生計に不可欠な役割を果たしています。
伝統知は、先住民族や地域社会が自然と共生してきた歴史の証であり、貴重な文化遺産でもあります。また、現代の科学や技術の発展にも貢献しており、持続可能な開発や生物多様性の保全に役立てることができます。
しかし、近年、伝統知はグローバリゼーションや開発の影響を受けて、失われつつあります。先住民族や地域社会の土地や資源が侵害され、彼らの文化や伝統が破壊されることで、伝統知も失われていきます。また、近代教育やメディアの発展により、伝統知が若い世代に伝承されにくくなっていることも、伝統知の喪失に拍車をかけています。
伝統知は、先住民族や地域社会の権利や文化を守り、生物多様性を保全するために不可欠なものです。伝統知を失わないためには、先住民族や地域社会の権利を尊重し、彼らの文化や伝統を支援することが重要です。また、伝統知を記録し、若い世代に伝承するための取り組みも必要です。
伝統知が生物多様性保全に果たす役割
近年、環境変化の影響により、生物多様性が危機に瀕しています。生物多様性を保全するためには、伝統知が重要な役割を果たします。伝統知とは、先住民や地域社会が長年にわたって培ってきた自然環境や生物に関する知識のことです。伝統知は、生物多様性保全に以下の3つの役割を果たしています。
第一に、伝統知は生物多様性を理解するのに役立ちます。先住民や地域社会は、伝統知に基づいて、生物の生息地、食性、繁殖行動など、さまざまな情報を収集してきました。これらの情報は、生物多様性を理解し、保全計画を立てるために役立ちます。
第二に、伝統知は生物多様性を保全するための具体的な方法を提供します。先住民や地域社会は、伝統知に基づいて、生物の生息地を保護したり、持続可能な利用方法を開発したりしてきました。これらの方法は、生物多様性を保全するために役立ちます。
第三に、伝統知は生物多様性保全に対する意識を高めるのに役立ちます。先住民や地域社会は、伝統知に基づいて、生物の大切さや自然環境との共生について教育活動を行ってきました。これらの活動は、生物多様性保全に対する意識を高め、保全活動への参加を促すのに役立ちます。
伝統知は、生物多様性保全に重要な役割を果たしていますが、現在ではその多くが失われつつあります。そのため、伝統知を保護し、活用していくことが急務です。
伝統知が失われつつある原因と現状
伝統知とは、長い間にわたって人々が培ってきた知恵であり、生物多様性を保全し、持続可能な生活を実現するために不可欠なものです。しかし、伝統知は失われつつあります。
伝統知が失われる原因は、大きく分けて3つあります。1つ目は、開発や都市化による自然環境の変化です。自然環境が破壊されてしまえば、そこに住む人々の伝統知も失われてしまいます。2つ目は、近代化や西欧化による価値観の変化です。近代化や西欧化が進展するにつれて、伝統的な生活様式や価値観が失われていき、伝統知も軽視されるようになってきました。3つ目は、人口増加と食料需要の増加です。人口が増加し、食料需要が高まるにつれて、森林や湿地などの伝統的な利用地が破壊され、伝統知が失われていきました。
伝統知の喪失は、生物多様性の保全に大きな影響を与えます。伝統知は、生物多様性を保全するための様々なノウハウを蓄積しています。例えば、伝統的な農法や漁業は、生物多様性を保ちながら食料を生産する方法として、長年にわたって培われてきました。また、伝統的な薬草や伝統的な医療は、生物多様性を保ちながら病気を治癒する方法として、長年にわたって培われてきました。
伝統知の喪失は、持続可能な生活の実現にも大きな影響を与えます。伝統知は、持続可能な生活を実現するための様々なノウハウを蓄積しています。例えば、伝統的な建築や伝統的なエネルギー利用は、環境に負荷をかけずに生活する方法として、長年にわたって培われてきました。また、伝統的な食生活や伝統的な交通手段は、環境に負荷をかけずに生活する方法として、長年にわたって培われてきました。
生物多様性条約と名古屋議定書における伝統知
生物多様性条約と名古屋議定書における伝統知
生物多様性条約は、1992年の地球サミットで採択された、生物多様性の保全と持続可能な利用、遺伝資源の公正かつ衡平な配分を目的とする国際条約です。この条約は、生物多様性の保全と持続可能な利用のために、伝統知の重要性を認めています。
名古屋議定書は、生物多様性条約に付随する議定書であり、2010年に名古屋で開催された第10回締約国会議で採択されました。この議定書は、遺伝資源の利用に起因する利益の公正かつ衡平な配分、伝統知の保護と尊重を目的としています。
生物多様性条約と名古屋議定書は、伝統知の重要性を認め、その保護と尊重を促進しています。伝統知は、先住民や伝統的なコミュニティが世代を超えて受け継いできた知識であり、生物多様性の保全と持続可能な利用に不可欠です。これらの条約は、伝統知の保護と尊重を促進することで、生物多様性の保全と持続可能な利用に貢献しています。
愛知目標18と伝統知
愛知目標18は、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)において採択された20の目標のうちの1つで、「伝統的知識、慣行およびイノベーションの尊重、考慮および共有」を目的としています。伝統知とは、先住民や地域社会に代々伝わる知識、慣行、イノベーションのことであり、生物多様性の保全と持続可能な開発に役立つと考えられています。
伝統知は、生物多様性条約第8条(j)項において、「生物多様性の保全と持続可能な利用に貢献する先住民および地域社会の知識、イノベーションおよび慣行」として定義されています。同条項は、先住民や地域社会の伝統知を尊重し、考慮し、共有するよう締約国に求めています。
愛知目標18は、伝統知を尊重し、考慮し、共有するための具体的な目標を設定しています。その目標には、以下のようなものが含まれています。
* 伝統知を生物多様性保全と持続可能な開発のための意思決定プロセスに組み込むこと。
* 先住民や地域社会の伝統知を保護し、尊重し、共有するための政策や制度を開発すること。
* 伝統知の保持者や実践者を支援し、強化すること。
愛知目標18は、伝統知の重要性を認識し、その保護、尊重、共有を促進するための目標です。この目標を達成することで、生物多様性の保全と持続可能な開発に貢献することができると期待されています。