インクルーシブ・ウェルスって何?~環境に関する新しい指標について~

インクルーシブ・ウェルスって何?~環境に関する新しい指標について~

環境が気になる

先生、インクルーシブ・ウェルスについて教えてください。

地球環境の専門家

インクルーシブ・ウェルスとは、経済のフローではなく、ストック面からとらえることで、国民の豊かさを表す概念です。

環境が気になる

ストック面とは、どのようなことですか?

地球環境の専門家

ストック面とは、ある時点での資本や資産の量のことです。経済のフローは、生産や消費の流れを表しますが、ストックは、それらの流れが蓄積された結果としての量を表します。

インクルーシブ・ウェルスとは。

環境に関する用語「インクルーシブ・ウェルス」

国民の豊かさを測る指標として、経済のフローを捉えるGDPなどが主に使われてきました。しかし、それに対して、インプットに基づいてストック面から捉えるものとして考えられたのが、「インクルーシブ・ウェルズ」です。

この概念は、従来から重要視されてきた人工資本、人的資本、自然資本など、人間福祉に関係する資本を幅広に含めており、国連大学と国連環境計画を中心に、このインクルーシブ・ウェルスの世界の動向を計測するプロジェクトが進められています。

インクルーシブ・ウェルスとは

インクルーシブ・ウェルスとは

インクルーシブ・ウェルスとは、その地域に住む人々の全体的な経済的、社会、環境面での豊かさを測るための包括的な指標です。従来の経済指標であるGDPとは異なり、インクルーシブ・ウェルスは天然資源や環境、人間の資本を考慮に入れ、経済成長のみならず、環境や社会の持続可能性を重視しています。

この指標は、国際連合大学の環境と人間の安全研究所(UNU-EHS)によって開発されました。UNU-EHSは、経済成長と環境の持続可能性の両立を促進することを目的とした国際的な研究機関です。

インクルーシブ・ウェルスは、人々が健やかで生産的に生活できる環境の質を維持しながら、経済を成長させることが可能な、持続可能な開発の目標を達成するために不可欠な指標です。

インクルーシブ・ウェルスがなぜ重要か

インクルーシブ・ウェルスがなぜ重要か

インクルーシブ・ウェルスとは、経済指標GDPを改善しようとして新しいものとして提唱された指標です。 GDPの改善がなぜ必要となったのかを簡単に説明すると、GDPは経済成長と環境の持続可能性を両立させることができないという根本的な問題を抱えているからです。

まず、GDPは貨幣のやり取り(お金の流れ)を基に計算されるため、環境や社会には目をつぶって経済成長だけを追求するという側面があります。経済成長はGDPだけに依存しているため、経済が成長すればGDPは増えるという結果が生まれる傾向にあります。

しかし一方で、経済成長は環境に悪影響を及ぼすという意味で、GDPが経済と環境の乖離を起こしてしまう原因の1つになっています。わかりやすい例で説明すると、工場が製品を大量生産して経済成長を果たせばGDPは向上しますが、工場の操業で環境は汚染されます。つまり、環境は犠牲にされてしまうのです。

そして経済成長は、財やサービスの消費を増大させることにもつながります。消費は富を生み出しますが、消費する資源やエネルギーを浪費し、廃棄物を増やします。つまり、消費しながら経済成長する限り、環境への負荷は避けられないのです。

インクルーシブ・ウエルスの現状

インクルーシブ・ウエルスの現状

インクルーシブ・ウエルスとは、環境に関する新しい指標であり、経済成長と環境の持続可能性の両方を測定するために使用されるものです。 これは、従来の GDP(国内総生産)とは異なる指標であり、経済成長だけでなく、天然資源や生態系の健康など、環境の価値も考慮しています。

インクルーシブ・ウエルスの現状は、あまり楽観的なものではありません。世界経済フォーラムによる2021年の報告書によると、世界のインクルーシブ・ウェルスは、1995年から2018年までの間に20%減少したとされています。これは、経済成長が環境の持続可能性を犠牲にして行われてきたことを意味しています。

インクルーシブ・ウェルスの現状を改善するためには、経済成長と環境の持続可能性のバランスをとる必要があります。これは、再生可能エネルギーへの投資、森林伐採の削減、生物多様性の保護などの措置を講じることによって行うことができます。

インクルーシブ・ウェルスを高めるためにできること

インクルーシブ・ウェルスを高めるためにできること

インクルーシブ・ウェルスを高めるためにできること

インクルーシブ・ウェルスを高めるためにできることはたくさんあります。ここではそのうちのいくつかをご紹介します。

-1. 再生可能エネルギーに投資する-

再生可能エネルギーは、化石燃料に代わるクリーンで持続可能なエネルギー源です。太陽光発電や風力発電など、再生可能エネルギーに投資することで、環境や社会への悪影響を削減することができます。

-2. 持続可能な農法を実践する-

持続可能な農法とは、環境や社会に悪影響を及ぼさない農業のことです。有機農業や、土壌や水を保護するような慣行を用いた農業などが含まれます。持続可能な農法を実践することで、自然資本を保全し、農産物の安定的な供給を確保することができます。

-3. 森林を保護する-

森林は、地球の酸素の約20%を供給し、気候変動を緩和する役割も果たしています。森林の保護は、自然資本を保全し、気候変動への適応を促進するために重要です。

-4. 生物多様性を保全する-

生物多様性は、地球の生態系の健全性を維持するために不可欠です。生物多様性を保全することで、地球の自然資本を守り、将来の世代にも持続可能な社会を残すことができます。

-5. 都市をより持続可能なものにする-

都市は、人口の増加や経済成長に伴い、環境や社会に悪影響を及ぼす場合があります。都市をより持続可能なものにするためには、公共交通機関の整備や、エネルギー効率の高い建物の建設など、さまざまな取り組みが必要です。

インクルーシブ・ウェルスを測る

インクルーシブ・ウェルスを測る

インクルーシブ・ウェルスの計測は、天然資源と人為資本など、従来の経済指標では考慮されていなかった要素を組み込むことで、国の富をより包括的に評価することを目指しています。これにより、経済成長と環境保全のバランスをより適切に測ることができるようになるでしょう。

インクルーシブ・ウェルスを測る方法はいくつかあります。最も一般的な方法の一つは、天然資源の価値を推定することです。これは、天然資源の価格や、天然資源から得られる利益に基づいて行うことができます。例えば、森林の価値は、森林から得られる木材やその他の製品の価格に基づいて推定することができます。

インクルーシブ・ウェルスを測るもう一つの方法は、人為資本の価値を推定することです。これは、教育や健康などの要素を考慮することによって行うことができます。例えば、国民の教育レベルが高い国は、国民の生産性が高く、経済成長を促進することができるため、人為資本が高いとみなされます。

インクルーシブ・ウェルスの計測は、国の富をより包括的に評価することができ、経済成長と環境保全のバランスをより適切に測ることができます。そのため、持続可能な開発を推進するための重要なツールとして期待されています。

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